私は、インプラントに関しては種々の治療法を行っていますが、講演なども行っている特に力を入れている治療の内容について、ここで説明します。
歯を喪失してしまうと、その歯を支えていた骨と歯肉も
インプラントの植立には、骨幅が7〜8ミリ程度あることが望まれますが、最低でも6ミリ以上の骨幅が必要になります。ですが、患者様の骨がその条件を満たしていない時も多いのです。そこで、骨再生治療が必要になるのですが、GBR以外にも、他の選択肢もあります。しかし、治療法によっては、一時的に増えた骨幅が、再び吸収してなくなってしまうことがあるのです。
上顎の奥歯があった部位にインプラント治療をする際に、かなりの頻度で邪魔をするのが、上顎洞と呼ばれる空洞の存在です。一般的に、この部位の骨はかなり軟らかく、インプラントには不利ですが、上顎洞があるために、インプラントのために使える骨の高さも不足する場合が多いのです。結果として、軟らかい骨に対して、標準より短いインプラントを使わなくてはならなくなるので、治療の成功率はぐっと下がります。
そこで、サイナスリフトによる上顎洞内への骨再生を行うことで、標準の長さ、もしくはそれ以上の長さのインプラントが使用できるようになりますので、他の部位とほぼ同様のインプラント成功率となります。
しかし、GBR同様に、骨充填材の種類によって、再生した骨の術後の骨吸収量が大きく異なりますし、充填材の使用なしでも骨再生するという報告もあります。
治療の上で共通することは、上顎洞の内側壁のメンブレンをしっかり剥離するという点です。現在、私は、充填材の使用を受け入れて頂けない患者様には、何も使用しないサイナスリフトを治療の選択肢のひとつに考えますが、基本的には、世界中のインプラント専門医が選択している方法に則して行っています。
インプラントの治療は、そもそも全く歯がない患者様への治療としてスタートしました。その時は、下顎に7ミリのインプラントを4本使用し、ブリッジを固定しました。それから、40年以上経過した現在でも、4本のインプラントで義歯を支えて、固定するという基本は変わっていませんし、費用対効果の高い治療法といえるでしょう。
骨、噛み合わせの状態などから、インプラントが4本平行に植立できるときは、既製のパーツが使えます。シンコーンシステムがその一つです。この時は、治療 費、治療回数ともに一番少なくてすみます。逆に、様々な理由でインプラントが平行でなく、例えば30度ぐらいの開きがあった場合は、オリジナルの角度補正 アバットメントの製作が必要になるために、費用と治療回数が増えてしまいます。
欠損部にインプラントを入れる時に、歯が何本かのこっている場合は、その歯を基準にしてインプラントのオペが出来ますが、歯が1本も残っていない患者様の時は、インプラントを入れる時に全く目安がなく、計画通りにインプラントを入れることが難しいのです。
そこで、有効な外科ツールがあるのですが、それは、CTのデータに直接インプラント手術の計画を打ち込みますと、「患者様の実際の形態を再現した立体的な顎模型」と「その顎骨に適合したインプラント埋入ドリルガイド」を製作することが出来るというシステムです。
このドリルガイドの使用により、無歯顎の患者様に対して、埋入ポジションに関しては、飛躍的に正確な手術が出来るようになりました。しかし、実際には、様々な理由で誤差が起きる可能性があり、手術中にそれをコントーロールできる経験、技術が必要になります。
私に関しては、このシステムの導入は、日本ではかなり早く、2003年でした。それ以来、5年以上に渡って、歯がまったくない(無歯顎)患者様には、このシステムを使用してインプラント治療を行っています。
もちろん、上記以外に関しても、インプラントに関することは、ほとんど行っています。どんなインプラント治療も基本は、「骨にまっすぐ入れる」「骨が足りない時は増やす」というシンプルなことの応用だと思います。
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